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健康コラム

 

 椎間板ヘルニアについて

動画再生、画像がうまく表示されない方はこちらからどうぞ。 

 

突然、キャンと鳴き、強い痛みを訴え、歩けなくなったと来院されることがあります。痛みの場所は首、背中、あるいは腰と様々で、体に触れただけで痛みを感じることも多いです。また、急性で重度の場合には下半身の麻痺が起こっている事もあります。椎間板ヘルニアは、早期診断、早期治療することが大切な疾患です。

 

今回のコラムでは、犬の椎間板ヘルニアについて、病因や治療法を中心にまとめたいと思います。

 

 

 

当院で治療を行った重度椎間板ヘルニアの外科治療例

 

(注:下記画像をクリックするとyoutube内で再生されます)

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 手術前(動画:13秒)

 

 手術後1ヶ月(動画:4秒)    手術後2か月(動画:8秒)

後肢は全く動かず、痛みを感じてもいない。引きずるように前足を使って歩行している。

 

 

ふらつきは残っているが、歩行できるように。頑張ってリハビリ中!

 

  少し右後肢のすべりは残っているが、走れるようになった。お散歩も元気よく行っているとのこと。 

 

最後に先進医療のご紹介として、椎間板ヘルニアに対する当院の再生医療(自家脂肪由来間葉系幹細胞療法)の取り組みについて簡単にご紹介したいと思います。

 

今回のコラムは少し長めですが、なるべく読みやすいように書いたつもりです。最後までご一読いただけますと幸いです。

 

 

 

 

【椎間板ヘルニアの症状】

 

背中や首の強い痛みや四肢を引きずるといった症状が一般的ですが、ヘルニアの発生部位により症状が異なります。

軽度の場合は、首や腰を触ると痛がったり、足を引きずって歩いたりしますが、重度になると四肢が完全に麻痺し、歩行が出来なくなるばかりか、立ち上がれない場合や、自力排尿できないこともあります。

 

 

【椎間板の仕組みとヘルニアになりやすい犬種】

 

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(図:イラストでみる犬の病気(講談社)より引用)

 

椎間板は、椎体と椎体の間に存在するクッションの役割をしている組織で、これが脊髄へ飛び出すことで椎間板ヘルニアが起こります。加齢に伴い病勢が進行してくることもあります。また、ダックスフンド、シーズー、ペキニーズ、ビーグルなどの犬種は若齢時から急速に進行することもあります。椎間板が突出した位置や脊髄の圧迫の程度で重症度が変わってきます。

 

 

【椎間板ヘルニアの診断】

 

神経学的検査

 

神経のどの部位に障害が起こっているかを大まかに調べるために行います。また、脊髄疾患だけではなく脳疾患との鑑別にも行います。治療後にどの程度改善したかを評価するためにも行います。

 

レントゲン検査

 

椎体と椎体の間隔が狭くなっているかを調べます。また、脊椎炎、腫瘍、その他の関節疾患や骨折などとの鑑別を行います。

 

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矢印の部位が他の場所より狭くなっているのがわかると思います。

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MRI検査

 

上記の検査で椎間板ヘルニアが疑われた場合は、MRI検査に進み、詳細なヘルニア部の位置や方向の特定、その他の脊髄疾患との鑑別を行います。  

 

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 横から見たMRI画像 上から見たMRI画像  正面から見たMRI画像 

 

矢印の部分が突出した椎間板物質です。黒く抜けているのがわかると思います。この部分が脊髄が圧迫され障害を受けていることになります。

 

・その他の検査

 

その他の疾患と鑑別を行うため、血液検査、尿検査などを行います。常に疾患が一つだけとは限りません。他に基礎疾患がある場合はそちらの治療も並行して行います。

 

 

【椎間板ヘルニアのグレード分類と治療法】

 

椎間板ヘルニアは進行の状況により5つのグレードに分類されます。グレードが大きくなるほど進行または重篤な状態です。また、各グレードで勧められる治療法が異なります。

 

分類 神経学的異常 主な症状 治療法




グレード1 なし

背部痛のみ

(体を触られると痛がる)

内科治療

(保存療法)

グレード2 自力歩行可能 なんとか歩行はできるが、足がひっくり返ってしまう。

内科治療

(保存療法)

グレード3 自力歩行不可

後ろ足を動かすことはできるが、歩行はできない。

外科治療

 

グレード4 浅部痛覚消失

後ろ足は麻痺し、皮膚をつねっても痛みを感じない。自力排尿できなくなる。

外科治療

 

グレード5 深部痛覚消失

後ろ足の感覚が完全に消失し、器具で強く圧迫しても痛みを感じない。

外科治療

 

【重要】

重度の脊髄障害が続くことにより、脊髄自体が融解してしまう進行性脊髄軟化症を併発することがあります。ヘルニアを起こしている部位から上行性、下行性に進行することで呼吸停止を引き起こし、死に至ります。進行性脊髄軟化症の治療法は現在のところありません。椎間板ヘルニアは、早期診断、早期治療が重要です。

 

 

 ○ 内科治療について:厳重な運動制限、炎症を抑えるお薬の投与を行います。

  ・ ケージ内で3~4週間、厳密に安静にさせる。以降徐々に正常な活動に戻していく。

  ・ 階段の上り下りをさせない。

  ・ ジャンプさせない。

  ・ 痛みがある場合は、炎症をとるお薬の投与を続けます。

 

 

 ○ 外科治療について:ヘルニアを起こしている部位の椎間板を摘出します。

  ・ 術後は1週間程度入院が必要です。

  ・ 退院後もリハビリが必要です。

  

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脊髄を露出するために使用する器具です。回転数を調整することで。削る速度を調節でき、スピーディで安全な手術が行えます。   細かな操作が必要なので、小さな器具が多いです。脊髄を圧迫している椎間板物質を摘出するための器械です。椎間板ヘルニアの為だけの手術器具です。

 

 

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( 図:SMALL ANIMAL SURGERY(interzoo)より引用)

上記のように脊髄を露出した後、少しずつ椎間板物質を摘出していきます。

 

 

摘出した椎間板物質です。ごくわずかな量に見えますが、重度な圧迫をしていた症例から摘出したものです。

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 【椎間板ヘルニアと再生医療】

 

当院では、椎間板ヘルニアをはじめとする神経疾患の治療に力を入れています。近年、CT検査やMRI検査の精度向上により、より正確で迅速な診断が可能となり、神経疾患の治療に対する大きな力となっています。しかし、例えば椎間板ヘルニアのグレード5(グレード分類は上記を参照)に対する外科治療後に歩けるようになるのは、50%程度といまだに高くなく、約半数が車いすや介助を必要とする生活を送っています。さらには、残念なことに治療自体が確立されていない神経疾患も未だ多く存在します。

 

「また一緒にお散歩が出来るようになりたい」、「元気に歩く姿をもう一度見たい」

 

当院の目標です。私たちも同じ気持ちで治療を行っています。

 

近年、再生医療という言葉がピックアップされています。主にヒト医学での話題が多いですが、獣医学の世界でも注目されている分野であり、当院においても積極的に研究している分野でもあります。

 

詳細は別コラムにまとめる予定ですが、外科治療を行い懸命なリハビリにも関わらず歩くことが出来なかった椎間板ヘルニアのグレード5の犬に対し、自家脂肪由来間葉系幹細胞を投与する事で、走れるようにまでなった症例を日本獣医再生医療学会(2013年)にて発表を行いました。

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